豪州物語

題目の選定



ユーカリの幹

シドニーのオペラハウスの近くにある王立植物園の中で、美しい姿をしたEucariputus tereticornisに出会った。独特な三角錐の形をした蕾に由来してこの名前がついているが、Forest Red Gum という名で親しまれている。

約20メートルの高さに成長したフォレストレッドガム  撮影:2005/05/20
約20メートルの高さに成長したフォレストレッドガム 撮影:2005/05/20

オーストラリア大陸に分布するユーカリは、20 乃至30メートル位にまで成長するものが多いようであるが、なかには50メートルの大木になるものもある。花や実のほかに幹の特徴も種類を見分けるヒントになる。Forest Red Gumは、オーストラリア大陸の東部とパプアニューギニアに分布し、最大では50メートル前後の高さに達するとされる。真っ直ぐに成長するのが特長で、よく茂った葉が幹の先端で円弧を描く。Red Gum と呼ばれるものの、幹の表面は薄い灰色で、木材として切り出された時に内部の赤い色を見ることができる。材質は硬く建築材料や枕木として利用される。

春から夏にかけておこる樹皮の脱落  撮影:2005/05/20
春から夏にかけておこる樹皮の脱落 撮影:2005/05/20

幹の表面は平滑で、大理石を撫でているような感触を与えるが、これは樹皮が取れてしまったあとのことで、春から夏にかけて気温が上がってくると急速に樹皮の脱落が始まる。写真の右上、右下は、樹皮がとれてすべすべした幹の表面が現れたところで、薄茶色の燐片状のところは、これから脱落していく樹皮なのである。初夏の頃、自治体でも家庭でも落ちた樹皮の清掃にかなりの時間を割くことになる。乾燥した日が続く夏に、樋にたま樹皮を除去するようにとの警報がでることもある。山林にあるユーカリの根元にはたくさんの樹皮が堆積して山火事の一因となるが、Bush Fire とよばれる山火事は住宅地の近くで発生することも稀ではない。

山火事で黒こげになった道路わきのユーカリ  撮影:1994/01/28
山火事で黒こげになった道路わきのユーカリ 撮影:1994/01/28

1993年12月にシドニーのあるNew South Wales州で発生した山火事は、州全体の消防隊を動員してもまにあわず、オーストラリア史上初めて、他の州全部に救援を依頼するほどの大規模のものであった。12月27日の時点では数箇所にとどまっていた山火事が、1月3日には州内の197箇所にひろがる凄まじさで、シドニーの街では太陽の光が届かず、まわりの景色は花や木をふくめて異様な色を呈していた。シドニー近郊の高速道路で数日立ち往生して家に帰れない人たちもあった。この10年前の写真は山火事がおさまった後に撮影したものであるが、このように黒こげになったのユーカリの木でも、しばらくすると、幹全体を覆う青葉が出てくる。樹皮の下にある休眠状態の芽が熱で活性化するのだと説明されている。この仕組みで、乾燥や熱に強い植物がオーストラリア大陸に次第に増えていったと考えられている。

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