トルコ紀行

題目の選定



(20)旅の終わりに

エフェソス古代都市遺跡を闊歩する猫  撮影:2012/03/26
エフェソス古代都市遺跡を闊歩する猫 撮影:2012/03/26

トルコの猫に初めて出会ったのは、2011年に半日ほどエフェソスの古代ローマ都市遺跡を訪れた時であった。まるで犬のように悠悠と遺跡内を歩く猫の姿になんとなく釈然としないものがあった。それは野良猫のイメージからは程遠い人懐こい猫たちの姿であったからである。食べ物をねだったり人を警戒するなどということは皆無で、むしろ観光客に歩調をあわせて散歩をしているという風景であった。遺跡の出口付近にはみやげものを売る店があるので、日暮れになればそのあたりに戻っていくのであろうかなどと考えた。とにかく、広大な古代ローマの廃墟のなかに佇む野良猫たちの姿が心に残った。

2012年の旅では、エフェソスだけでなくトルコの各地で同じ体験をした。ふとしたきっかけでトルコの猫にまつわる随筆に出会い謎が解けたので、いろいろな場所で出会った猫の姿を記して旅の締めくくりとする。

エフェソス古代都市遺跡の猫  撮影:2012/03/26
エフェソス古代都市遺跡の猫 撮影:2012/03/26

猫がいかに人を信頼しているかは、人が横を通り抜けても恐れる様子もなくじっと同じ所に座っていることから分かる。どの猫も反応は同じで、この世の中には猫をいじめる人などはいないと信じているかのようである。観光客のなかには猫好きの人も多く、頭や体を撫でていく人も多く、その際には勿論嬉しそうに反応する。トロイ遺跡では、見学者の便宜のために設けた歩道の手すりに座って日光浴を楽しんでいる猫が喜んで見学者を迎えた。

イスタンブルの陶器屋の店先で遊ぶ猫  撮影:2012/03/22
イスタンブルの陶器屋の店先で遊ぶ猫 撮影:2012/03/22

イスタンブルの陶器屋の陳列を通りから覗いていたら、子猫が小さな容器の間を上手に歩いて最後は大皿の中に入った。前足も後足も容器に接触することなく慣れた足どりであった。私に気がついた店主はにっこり笑っていつもの事ですという表情だった。

アヤソフィア博物館を囲む塀の横で昼寝する猫  撮影:2012/04/04
アヤソフィア博物館を囲む塀の横で昼寝する猫 撮影:2012/04/04

猫はよく寝る動物であるが、トルコの織物キリムのうえで昼寝をするこの猫の後ろには黒猫も座っていた。キリムはおそらく猫に与えたものであろうが、もし、夕方になってキリムを家に取り込む時間になった時、キリムの持主が猫好きかどうかが分かる。ここからがトルコの猫の話の核心部分で、以下は作家、原田マハさんの随筆の要約。

あるとき、うたた寝をしている預言者ムハンマドに猫が近づいてきて、一緒にうたた寝を始めた。目が覚めたムハンマドは、猫が自分の腕で眠っていたのに気づき、着衣の袖を切り離して猫の眠りを妨げなかった。猫たちは預言者ムハンマドに守られた大切な生き物なのである。

ヒポドロームにある公園にいた猫  撮影:2012/03/22
ヒポドロームにある公園にいた猫 撮影:2012/03/22

ヒポドロームにある公園に坐って休憩していた時、食べ物をもってきて猫に餌をあげている婦人を見た。また何匹かの猫はキオスクに行きそこで働いている人から食べ物を貰っていた。どの猫も野良猫というイメージからはほど遠く、毛並みはふさふさとし清潔な感じである。皆で面倒をみる「地域猫」という考えもあるようである。近くのレストランで昼食をとった時にも、休憩に出てきた従業員が、店先にいた猫に、一口で食べれそうな小さな食べ物を口元に差し出しているのを目撃した。トルコの猫たちは幸せである。

トプカプ宮殿の庭園にいた猫  撮影:2012/04/04
トプカプ宮殿の庭園にいた猫 撮影:2012/04/04

声をかけると必ず歩み寄ってきて人との接触を楽しむ猫は、皆に大切にされているからであり、また、人を信頼しているからである。こんなことは一朝一夕にできあがるものではない。これほど私たちを和ませてくれる猫たちは、トルコの親善大使であり、これも世界遺産といったら言い過ぎであろうか。

Move to the Top